第1回
ロンドンに来てから約1年半前、私たちはFLAT探しに悪戦苦闘していた。なかなか気に入ったFLATにめぐり会えず、やっとのことで見つけたKings
Cross のFLATでの出来事だった。
私たち夫婦にとって今更ながら他人と共同で住むのはちょっとひいてしまうところがあり、希望として夫婦水入らずでいられるStudioか1Bed
Flatを探していた。
だけどなかなか理想の物件が見つからない。
家賃が安ければシェアー、1Bed Flatがあったとしてもセンターからぐーんと遠くなる。
正直言って私たちの”理想”たるものはバカげたモノだった。
場所はセンターで、もちろん1Bed Flat。しかも庭付きで月£700以内。
あるわけがない。
この条件を日系エージェントに言うとまず笑われる。
「ないですね。そのような物件。ZONE3〜4あたりでなら…」
そして、あきれられる。
「どこ探しても一緒ですよ」
そりゃそうだ。そんなことは知っている。
私たちは常識超えて掘り出し物を見つけようとしているんだから、この努力を買って欲しい。
そして、この努力も虚しく常識のある探し方をしようと考えてたある日のこと。
最後の掘り出し物を見つけに日系のエージェントに飛び込んだ。
どうせまた笑われるんだろうなと思いながら。
斜めに傾いた階段を上り中に入ると、机が2つだけ並んでいる。
私はその左側の椅子に座って理想のFLAT条件を勇気をもって発表した。
彼の顔には必死で探してくれいてる気配が感じられ、 ぺらぺらファイルをあさっている。
この人の心の中はどうなんだろう。私たちのことあほと思っているのかな。
そんな沈黙があり、予想通り「ないっすね」と彼は残酷にもそう告げた。
ふーっとため息をつき帰ろうとしたとき、 彼はかぼそい声でこういった。
「1Bedでグランドフロアー。月700でさっき電話が入ったばかりです。」
私の顔は赤面し、頭から湯気が出ているのかと心配になるほど興奮した私の横に座っている主人は冷静に対処していた。
でも、心の中ではドキドキしていたくせに。
この物件はまだファイルにしていない新鮮な情報だったのだ。
こんな素晴らしい条件を見逃すわけにはいかない。
エージェントにデポジットを払い、 即その大家に電話してアポを取ってもらうように手配してもらう。
そして、運命のFlatを見に。
けして有頂天にならず、冷静に判断する気持ちを忘れないように心がけ、 ドアベルを鳴らした。
玄関から顔を出したのは大柄なちょいと人相の悪い黒人だった。
名前はジョニー(仮)。
私の予想とは異なった人物だったので、ちょっと驚いてしまったが 冷静に取り乱すことなく、頑張って挨拶をし、 家賃のこと、支払いのことなど必要なことを話し合い、
難しい契約の話になると主人に任せ、 あっという間に、その黒人と契約を交わしてしまった。
ホールディングデポジットとして£700渡し、 念のためそこら辺にあった紙切れに何かあったときにためにとレシートとして、サインと受け取った金額を書いてもらった。
”これで安心だ”
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