第21回
「だから俺は騙されたんだ!俺はミスタージョニーではないし、そんな契約書も知らない。しばらく家を空けてたら勝手に鍵を替えられて締め出されたんだ!」
身をを乗り出して、顔を真っ赤にして、ものすごい剣幕だった。これは彼にとって不利なのではないか?と思えるくらいの凶暴性を剥き出しにして。裁判官はどう取るのだろうか。真剣に真実を訴えるあまり興奮していると取るのだろうか?
「彼らが鍵を替えたのは、区からの調査員に指示されてのことだったが、なぜ調査員はそのような指示を出さなければいけませんでしたか?」
「彼らが俺をはめようとして通報したからだろう!フラットを乗っ取ろうとしたんだ。」
実際彼はずっと私たちが通報したものだと思っていたらしい。迷惑な話だ。
その後はやはり弁護士に叩き込まれたであろうストーリーを崩さないように質問に応えた。裁判とは同じ話を繰り返させて、どちらが矛盾点が多いかを判定するという要素もあるかもしれない。
傍聴席にいる我々はみんな証言も終わっていて、楽観的な予測もあり、かなりリラックスした状態で、ジョンの発言に対して笑いさえ起こっていた。またその中の1人の携帯がけたたましく鳴り、裁判官に再度睨まれるということもあった。
ついにジョニーの弁護士の最終弁論に入った。異様に長く感じた、一連の裁判も終りに近づいている。彼は静かに話し始めた。
「ジョニーは温厚な性格で、今まで一度もトラブルを起こしたことがありません。今回の件は、被害者はジョニーのほうだと言えませんか?彼は法律に則って有利な条件でシェアのオファーをし、その証拠もあります。一方で原告側の提示した契約書は、全くでたらめな偽サインがしてあるだけです。原告側でも本物のジョニーのサインの入った原本を持っているのにも関わらず偽の契約書を作成してきました。」
ジョニー側が提示してきた契約書はコピーで、原本は私たちが持っていると言い張っていたが、前述の通り、契約書は通常原本を2通作りそれぞれが直筆のサインの入ったものを持っていなければいけない。前回これを指摘した際、次回持ってくると言っていたのにも関わらず、うやむやにするどころか同じ主張を繰り返している。
「シェアで月に£700と言うのも、キングスクロスと言う非常にセントラルなロケーションであれば、常識的な金額です。」
裁判官は名士で裕福な暮らしをしているだろう。恐らくフラットシェアの相場がいくらか全く知らないであろうことを見越しての発言だ。常識的な金額はその半分だ。
「彼が父親の看病でしばらく家を留守にしなければならなかった時、JKJさんの行動と言えば、フラットの鍵を無断で替え、電話にも一切応えず、違法に占拠することでした。あまりにもひどい。
事件当日も再三にわたるジョニーの電話に応えず、呼び鈴を鳴らしても居留守を使い、天気が良かったにも関わらず厳重にカーテンを締め中の様子が一切わからないようにしました。」
事件当日は、朝から天気は悪く、ジョニーが来た辺りでは雨も降っていた。忘れるはずもない。
「そこで彼は同居者の安否が心配になり、また同時に持病の喘息の発作に見舞われ、薬を得るために、庭から窓ガラスを割って浸入しなければならなかった。これはその状況に置かれたら誰でもとる行動です。」
一貫してジョニー側から繰り返し言われてきたストーリーの結末だ。これが本当だったら、我々はかなり悪人で、ジョニーは天使並みの善人になる。
やがて最終弁論が終り、裁判官は判決を出すために別室に引き上げていった。
時計は閉館時間をとっくに過ぎていたが、今日中に判決を出す意向のようだ。
我々は一度廊下に出て雑談をした。
とにかくやることはやった。あとは判決を待つのみ。 |